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水素の2024年展望、世界各地で大規模生産始まるも需要創出に課題

Morning lark 2024. 1. 25. 11:25
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 2024年は、世界各地で大規模なグリーン水素*1の生産が始まる(表1)。春ごろには、伊藤忠商事や大阪ガスが出資するデンマークEverfuelが、世界最大規模となる年間3000tの水素生産を開始する。このほかナンビアでは水素製造施設を併設した水素ステーションと水素発電所が、いずれもアフリカで初めて稼働を開始する。

表1 2024年に稼働開始が予定されているグリーン水素生産プロジェクト
(出所:日経クロステック)
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*1 グリーン水素 再生可能エネルギーなどを使って、製造工程で二酸化炭素(CO2)を排出せずに造った水素。自動車や発電設備において、従来の化石燃料をグリーン水素に置き換えることでCO2排出量を削減できる。次世代エネルギーの1つとして期待されている。

 世界中で水素製造施設の“稼働ラッシュ”が起こる1年だが、プロジェクトの中には製造した水素の使い道や引き取り手が決まっていないものも多い。ある意味、「卵が先か、ニワトリが先か」のような状況ともいえる。水素エネルギー市場の拡大には十分なグリーン水素の供給量が必要な半面、それを使うのに魅力的な(投資を引き付ける)活用先も要るはずだ*2。

 よって2024年は、次々と始動する生産プロジェクトの後を追うように、需要創出に向けた動きが各国で活発化すると筆者は予想している。日本においても、水素を活用するための技術開発や、規則・補助制度の策定などを含めたインフラ整備が進む重要な年になるだろう。

*2 国際エネルギー機関が2023年9月に発行した「Global Hydrogen Review 2023」によると、2022年の世界の水素需要のうち、輸送や発電などエネルギーとしての用途(新規需要)は0.1%に満たない。需要のほとんどは、化学原料をはじめとした産業用途(従来需要)に集中している。

「使う」技術で先頭走る日本

 水素事業に注力する川崎重工業は、2024年を「水素ガスタービンなど、水素を『使う』取り組みを一層広げる年」と位置付け、技術開発や実証を通じた需要拡大を図る。

 その1つが「水素バイク」の開発だ。同社の子会社であるカワサキモータース(兵庫県明石市)などが参画する水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)は、サウジアラビアで開催中の自動車競技「ダカール2024」(ダカールラリー、2024年1月5~19日)に、水素燃料エンジン車「HySE-X1」で参加する(図1)。実走行を通じて水素エンジンの課題を抽出し、水素バイクの早期実現を目指す。

 このほか、川崎重工は2024年の後半に水素基地用大型液化水素タンクの設計審査や、船舶用水素エンジンの陸上での運転試験を予定する。