米自動車「EV化」への道が、カリフォルニアから本格的に始まる理由
アマゾンは新興EVメーカーに 10万台を発注 米国カリフォルニア州は6月末、「2045年に州内で走行するトラック、バンをすべてゼロ・エミッション(ZEV)、つまり電気自動車(EV)や水素(燃料電池車、FCV)など排気ガスを出さない車両に変更する」方針を打ち出した。 【この記事の画像を見る】 条例としては2024年から施行され、まずデリバリーバンや大型トラックなどの商用車が対象となる。現在でもカリフォルニア州大気資源局(CARB)はメーカーに対しライト・デューティ・セグメントと呼ばれる中型バンなどにEV、水素を使用するモデルを追加するよう求めている。それが徐々に強制となり、最終的には州内の道路が走行できなくなる。 企業側の努力はすでに始まっている。アマゾンは新興EVメーカー、リビアンに10万台のEVデリバリーバンを発注している。納車されれば世界最大級のEV流通ネットワークが構築される展開になる。テスラはセミという中型トラックのEVを発表しているが、この他にもニコラ・モーターズなどEVバン、ピックアップトラックに特化した企業が次々に生まれている。こうした企業と既存の自動車メーカーのEVバンが、競い合う図式になる。
条例発表について、カリフォルニア州のニューサム知事は「カリフォルニアは化石燃料の追放という面で全米をリードする州となる。州内では有色人種の子どもたちが最も汚染された空気にさらされており、今回の決定は州内の子どもたちに明るい未来をもたらす」と語った。 ● 最終目標は2045年に州内で ガソリン、ディーゼル車の販売を禁止 米国はカリフォルニア州に限らず、住んでいる地域によって治安その他に大きな差がある。トラックが走るフリーウェイ沿いの騒音や大気汚染が激しい地域には貧しい人々が住むが、その割合は圧倒的に黒人やヒスパニックなどが多い。今回のニューサム知事の発言は、アメリカ中を揺るがせた人種差別への抗議デモにも触れたもので、毎日吸う空気からも差別をなくそう、という意味合いがある。 カリフォルニア州のEV化の展開は、2024年に中型トラック(車両総重量8500~1万4000ポンド、3855~6350kg)の販売台数の5%、大型トラック(車両総重量1万4001ポンド以上、6350kg以上)は9%、大型牽引車(車両総重量2万6001ポンド以上、1万1793kg)は5%をZEVにする。 そして2035年までに中型トラックは55%、大型トラックは75%、大型牽引車は40%をZEVにする。その他、デリバリー用のトラック、バンなどの75%もZEVにする。そして政府が使用する商用車、ラストマイルデリバリーと呼ばれる住宅地などを走るトラックは35年に100%がZEVにする。 最終目標は2045年に州内でガソリン、ディーゼル車の販売を禁止がすることだ。 トラクター・トレーラーなどのヘビー・デューティから規制を始めるのは、こうした大型トラックと中型トラックがクルマによる大気汚染全体の実に80%を占める、といわれるためだ。カリフォルニアにはロサンゼルス港というアジア貿易の中心地があり、そこからコンテナ車などで物資が州内、そして米国内全体に運ばれる。その大型トラックをEVや水素にすれば、かなり大気汚染が防げる。
ZEV化の推進に対し、業界団体からの反発は強い。長距離走行、バッテリーの重量などを考えると、大型トラックのEV化というのは技術的に難しい面がある。水素(FCV)に関してはトヨタが協力するプロトタイプがロサンゼルス港で試験的に導入されているが、水素ステーションの国内展開などを考えると急速に普及するとは思えない。 ● カリフォルニア州の方針が EV化に追い風に EVやFCVは既存の内燃機関モデル比で割高になり、輸送会社のコスト負担が大きくなる点が問題だ。トラックの価格が上がれば、輸送費用に反映され、物価全体が高くなるかもしれない。一方で州がZEV化の条例を定めた効果として、インフラ整備やメーカーのEV開発の活発化と、価格競争にによる販売価格の低下が期待できる。 カリフォルニアが導入する大気汚染防止策は北東部の州にすぐに広がり、同様の条例が生まれて政府や自動車メーカーとの訴訟になる、というのがこれまでの流れだ。しかし今回は新型コロナウイルス、人種差別撤廃、という要素が絡み、反対しづらい状況が生まれているのも確かだ。カリフォルニア州の方針が、EV化に追い風になることは間違いない。 (報告/土方細秩子、まとめ/CAR and DRIVER編集部)
https://news.yahoo.co.jp/articles/39c65b17f9f6a392ed7492261b48380361d44d3e
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