アイシンが産業用SOFC実用化へ…水素環流で高効率発電
アイシンは家庭用燃料電池「エネファーム」で培った技術を生かし、高効率な産業用純水素固体酸化物形燃料電池(SOFC)や固体酸化物形電解セル(SOEC)の実用化を加速する。水素還流技術を採用するなどして発電効率を高め、SOFCは2024年度中に自社工場や事業所での実証開始を目指す。将来は地域と連携したエネルギー・資源循環につなげる。(名古屋・増田晴香) 【写真】アイシンの家庭用燃料電池「エネファーム」 水素から電気をつくり、二酸化炭素(CO2)を排出しないSOFCはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の観点から産業設備向けでも注目されている。エネファームを手がけるアイシンは、SOFCの熱マネジメント技術や燃料利用率向上技術を蓄積してきた。 エネファームは12年の発売後も高効率化に努め、最新の22年度モデル「エネファーム タイプS」の発電効率は世界最高水準の55%を達成。この技術を産業用純水素SOFCにも生かす。 政府が示す「水素基本戦略」では、業務・産業用燃料電池の発電効率を現状の40―55%から30年には60%への引き上げを目指しており、アイシンも純水素SOFCで60%を目標に設定する。 エネファームの技術を応用することで55%程度は達成できる見込みだが、加えて「水素を使い切る」構造を追加する。従来は発電後に余って排出される水素を燃焼していたが、この水素を還流させて発電に再利用することで燃料効率を高めるという。 24年度中に自社工場・事業所内での実証開始を想定しユニットの開発を進めている。実証では水素還流により実際に発電効率を向上できているかといった点や、複数台のユニットを連携した際に最適な電力を供給できるかなどを検証する。事業化の時期は未定だが、長寿命化・低コスト化といった課題に取り組み社会実装を加速する。 並行して、電気から水素をつくるSOECの開発も進行中だ。太陽光発電などの再生可能エネルギー由来の余剰電力から水素を製造し貯蔵、発電に利用できるため、同エネルギーの需要・供給調整機能として活躍する。災害時に地域に電力を供給するなどレジリエンス(復元力)強化にも期待する。 同社は社内でエネルギーや資源を循環させる仕組みを構築している。 貯蔵した水素はSOFCでの発電に使うほか、アルミニウム溶解炉の排ガスから分離・回収したCO2と水素を反応させてメタンを合成・製造する技術「メタネーション」への利用も想定する。 個社の取り組みにとどまらず、中部圏の自治体や経済団体、企業で構成する「中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議」との連携も検討。地域を巻き込んだエネルギーや資源の循環モデルを思い描く。
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