ENEOSのe-fuel実証プラント、ガソリン並み価格の実現に挑む
ENEOSが中央技術研究所(横浜市)に設置した合成燃料(e-fuel)製造実証プラントは、原料から一貫製造する。再生可能エネルギー(グリーン電力)でつくった水素(H2)を原料に使用する点も特徴だ。2024年9月に、e-fuelの最初の1滴である「ファーストドロップ」を採取した(図1)。社会実装のためには、価格を原油由来のガソリン並みに下げる必要がある。
実証プラントで得られたe-fuelの品質は、原油由来の製品と変わらないという。それを示すために、2024年9月の実証プラントの完成式典では、同プラントでつくったガソリンを入れたトヨタ自動車の中型多目的スポーツ車(SUV)「ハリアー」と中型車「カローラ フィールダー」の走行デモを見せた(図2)。
日本政府は、2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ:CN)に向けた取り組みを進めている。ENEOS中央技術研究所で開いた実証プラントの完成式典で、ENEOSホールディングス社長の宮田知秀氏は「(政府のCN戦略の中で)当社はCN燃料への転換を加速させている。実証プラントを稼働させたe-fuelはその取り組みの1つである。(e-fuelからつくった石油製品は)現在の石油製品と同じように使えるのが特徴」と強調した。
e-fuelとは、二酸化炭素(CO2)とH2を原料とする液体燃料のこと。再エネ由来のH2と、工場などから排出されるCO2や大気中のCO2を使ってつくるためCN燃料といえる。ENEOSの実証プラントも、この仕組みでe-fuelの基になる合成粗油(以下、粗油:原油に相当)を生産する(図3)。
2040年までに生産能力1万バレル
同プラントの粗油の生産能力は1日当たり1バレル(約159L)。2027~2028年度には生産能力を同300バレル(約4万7700L)に拡大し、2040年までには同1万バレル(約159万L)に増やすことを計画している。これらの量産プラントの設置場所は検討中だ。粗油から生産した重油や軽油、ガソリン、航空燃料などの石油製品は当初、既存の製品に混ぜて使うことなどを想定する。
自動車分野では現在、世界的に電気自動車(EV)の販売が減速しているが、中長期的にはEVの普及は進むと見られる。それでも、一定数の内燃機関(ICE)車(既販車を含む)は残る。大型船舶や航空機などは電動化が難しい。こうした事情から、e-fuelを普及させることは運輸分野のCNに寄与する。
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