なぜトヨタはバッテリーEV戦略に関する衝撃的な説明会を開催したのか?
トヨタ自動車(以下、トヨタ)が12月14日に開催した「バッテリーEV戦略に関する説明会」を聴いた、モータージャーナリスト・大谷達也氏の感想とは?
ずらりと並んだコンセプトカー
率直にいって、驚いた。 それが、トヨタが12月14日に行なったプレゼンテーションを見ての、私の印象である。 なぜ、驚いたのか? 当日、豊田章男社長みずからが登壇し、プレゼンテーションの大部分を受け持ったこともそうだが、それとともに圧倒されたのが、章男社長の後方に計16台のBEV(バッテリー式電気自動車)が並べられたことにあった。 このうち、2022年に発売予定の「bz4x」は量産モデルに近いものだろうが、それ以外はいずれもプロトタイプだったはず。通常、こういったプロトタイプを製作するには1億円単位のコストがかかるとされる。それを15台も並べたのだから、単純に計算しても15億円や20億円はかかっていたことになる。 もっとも、なかには今回のプレゼンテーション以前に製作されたものもあったそうだが、それにしても、1回のモーターショーで発表されるプロトタイプが1、2台であるのを考えれば、1回のプレゼンテーションにここまで手間とコストをかけたことは異例中の異例といえる。
開催の理由を考える
では、なぜトヨタはここまで大がかりなEVに関するプレゼンテーションを実施したのだろうか? その最大の理由は、EVにまつわる世間の誤解を正すことにあった。 「2030年までに年間●百万台のEVを販売する」「2035年までに生産台数のすべてをEVにする」 昨今、そういった威勢のいい発表をする自動車メーカーが増えている。なぜ、予測が難しい将来のことについて、それほど明確に宣言するかといえば、そのほうが社会に対するインパクトが大きいうえ、環境問題に積極的に取り組んでいるというイメージを強化するのに役立つからだ。 トヨタは、こういった発表を頑なに拒んできた。その背景にあるのは「技術的選択肢を多く残すことこそ、カーボンニュートラルを素早く、無理なく実現する近道」という思想であり、「エンジンを生産する余地を残すことで雇用を確保できる」という社会的な責任感であった。 私自身の考え方も、これに近いが、この考え方はどうも世の中に受け入れられにくいらしい。特に、明快なメッセージが求められる欧米では“トヨタはカーボンニュートラルに及び腰”と受け止められることが多く、これがたとえば株価の下げ要因となり、販売現場での苦戦などを招いていたようだ。 そして、こうした事態に業を煮やした章男社長が、発表できるネタを総動員し、社会にできるだけ大きなインパクトを与えることを目指して開催したのが、今回のプレゼンテーションだったようだ。
BEVは理想的か?
将来にできるだけ多様な選択肢を残すというトヨタの考え方には、私も基本的に賛成である。 カーボンニュートラルを実現していく過程でBEVが大きな役割を果たすのは間違いないだろう。ただし、私はBEVがそれほど理想的なクルマだとは思っていない。 そもそも、一般家庭が3日や4日もかけて消費する大量の電力をバッテリーに蓄え、1台のクルマに搭載するというその原理が、私にはかなり無理があるように思う。当然、バッテリーは重く大きくなって自動車の効率を低下させる。それだけでなく、リチウムやコバルトといった天然資源を大量に必要とする点にも心配は残るし、発電をどうするか? 充電施設をどう用意するか? も、難しい課題だ。自動車としてのBEVに魅力的な側面が数多くあるのは事実であるものの、BEVだけでカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)を切り抜けようとするのはあまりにも無理があるし、主に資源面や電力供給面での負担が大きすぎるような気がする。 じゃあ、FCEV(燃料電池自動車)が理想解なのかといえば、そうとも言い切れない。FCEVの心臓部であるフューエルセルの製造コストは相変わらず高く、水素の製造や供給網をどう整備するかも大きな課題だ。FCEVの発電効率が30~40%と決して高くない点も懸念材料である。いっぽうで燃料の高速充填が可能な点であるとか、燃料の貯蔵や運搬が比較的容易であるのはFCEVのメリット。BEV同様、やはり一長一短だ。
トヨタの未来に期待!
私がもっとも期待をかけているのは、カーボンニュートラルな液体燃料である。俗に「e-フューエル」とも呼ばれるが、二酸化炭素と水素を化合させて作られる燃料のほかにも、微生物に抽出させたアルコールなどを利用する方法などもある。液体燃料であれば既存の自動車にも活用しやすいうえ、素早い給油も可能。もちろん、既存の燃料供給網が活用できることも大きなメリットだ。 ただし、近年の研究によると量産が難しく、たとえ量産できても現在のガソリンの何倍ものコストになるため、早くから開発に着手していたアウディなどもすでに計画を断念しているのが現状だ。 どれをとっても“帯に短し、たすきに長し”な理由は、従来の化石液体燃料が高エネルギー密度、運搬や貯蔵が容易、コストが安いといった条件をすべて満たす理想的なエネルギー源だったからにほかならない。これに代わるエネルギー源はそう簡単には見つからないだろう。 いずれにしてもカーボンニュートラルの解決策をBEVに1本化するのは非現実的で非効率的で非科学的だ。 いっぽうで、今回のようにBEVを手広く商品化する計画を明らかにすることは株価対策の面でもブランドイメージ向上のためにも重要だったのはよくわかるが、それと同時に、資源保全やエネルギー・セキュリティ、技術開発の多様性と柔軟性、雇用の確保といった観点から従来どおりの主張を繰り返し、ヨーロッパ、中国、そしてアメリカなどの理解を広く求めていくことも、リーディングカンパニーであるトヨタに望まれる姿勢であると思う。
文・大谷達也
なぜトヨタはバッテリーEV戦略に関する衝撃的な説明会を開催したのか?(GQ JAPAN) - Yahoo!ニュース
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トヨタ自動車(以下、トヨタ)が12月14日に開催した「バッテリーEV戦略に関する説明会」を聴いた、モータージャーナリスト・大谷達也氏の感想とは?
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