ミライのFCスタックに8万円超のプラチナ、セルの元素組成を分析
Fuel Cell / 2022. 3. 24. 07:49
トヨタ自動車の新型「MIRAI(ミライ)」の燃料電池(FC)セルに使われている白金(Pt)は、8万4480円相当――。
燃料電池(FC)セルの内部
セパレーターとセパレーターの間にMEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)が挟まれている。(写真:松田篤志)
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日経クロステックは、分析・計測機メーカーの堀場製作所の協力を得て、FCセルの構造・材料分析を行った。その結果、1台のミライには約19.2gのPtが含まれていることが明らかになった。白金1gの価格は4400円(2022年3月15日現在、田中貴金属工業HPより)であるので、19.2gは8万4480円となる。
FCセルの構造は、水素流路側から酸素(空気)の流路側に向けて次のような層構造をしていることが分かった。水素の流路を兼ねるアノードセパレーター、ガス拡散層、撥水層(はっすい)、アノード極触媒、高分子電解質膜、カソード極触媒、撥水層、ガス拡散層、カソードセパレーターである。ガス拡散層は、触媒にまんべんなく気体分子を送り込むための層、撥水層は反応などによって生じた水分を素早く排出する層である。燃料電池反応は、アノードとカソードの触媒および高分子電解質膜で構成されるMEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)で進む。
FCセルの構造
水素供給面(図の上部)から順番に、アノードセパレーター、ガス拡散層、撥水層、アノード極触媒、高分子電解質膜、カソード極触媒、撥水層、ガス拡散層、カソードセパレーターとなる。(出所:日経クロステック)
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さらに材料分析によって、次のことが明らかになった。
- (1)隣り合うセルと化学的に隔離し、発電した電力を取り出す集電体として働くアノードおよびカソードのセパレーターが、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)でコーティングしたチタン(Ti)だった
- (2)アノード極触媒はPtだった
- (3)カソード極触媒はPtとコバルト(Co)の触媒であることが分かった。ただし、鉄(Fe)も検出されたことから、Fe系の触媒も含む可能性がある
- (4)酸素側の撥水層にフッ素(F)を検出した。水素側にはFは検出されないことから、発生した水を流しやすくするために入れている可能性がある
- (5)高分子電解質膜は縦方向で硫黄(S)とFの濃度が異なり、3層(Sリッチ層/Fリッチ層/Sリッチ層)で構成されていることが観察された
- (6)電解質膜の劣化を防ぐために、ラジカルクエンチャー*成分としてセリウム(Ce)を含有する
以下では、この分析について細かく見ていく。
*ラジカルクエンチャー=電解質膜の劣化原因となるラジカルを消去促進する物質。ラジカルとは、不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオン。燃料電池内では、OHやOOHといったラジカルが発生し、これが劣化を引き起こすとされている。
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