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金属繊維から成る不織布メーカーの ベルギーBekaert(ベカルト)は、ドイツで開催された産業展示会「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)2024」(2024年4月22~26日)に、東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)と共同開発した、PEM(Proton Exchange Membrane)形水電解装置用の膜電極接合体(MEA)を出展した(図1)。

 
図1 ベカルトが出展した、東芝ESSと共同開発のMEA(左)
面積は100cm2。ベカルトのTi-PTL上に東芝ESSのミルフィーユ構造のIrO2を成膜してあるという。ACLSは「Alternating Catalyst Layer Structure」の略(写真:日経クロステック)

 両社は2024年2月29日に、MEAの共同開発で提携することを発表していた。そこから2カ月足らずでの出展である。

イリジウムの高騰でPEM形に暗雲

 水電解装置のMEAでは、酸素を発生するアノード(酸素極)での反応が全体を律速することが課題になっている。特にPEM形では、酸素極の触媒としてレアメタルで高価なイリジウム(Ir)を利用する。しかも、Irの価格は2020年に急騰後、高止まり状態で、PEM形MEAの製造コストを大幅に押し上げる要因になっている(図2)。水電解装置で生産する水素(グリーン水素)が、天然ガスもしくは天然ガス由来の水素(グレー水素)などとの価格競争力を問われる中で、この製造コストの高騰は、PEM形水電解装置の普及に対する大きな課題になっている。

[画像のクリックで拡大表示]
図2 Irは2020年に約4倍に急騰
2016年比では約12倍。その後も高止まり状態で、PEM形水電解のセルスタックの2024年の製造コストは2016年比で約7倍になった(写真:ベカルトの競合である米Mottのハノーバーメッセでの講演スライドを日経クロステックが撮影)

 そうした中、東芝ESSは、Irの利用量を約1/10にしても水電解性能が低下しないMEAを2022年10月に開発したと発表していた。チタン(Ti)ベースの不織布(Porous Transport Layers:PTL)の上にスパッタ装置で、酸化イリジウム(IrO2)の非常に薄い層を数十層形成することで実現した。東芝ESSはこの層構造を「ミルフィーユ構造」、または「Alternating Catalyst Layer Structure(ACLS)Coating」と呼ぶ(図3)。

図3 東芝ESSが開発した「ミルフィーユ構造」の多層IrO2
(出所:東芝ESS)

 ベカルトはこのTi-PTL大手で、既に5000cm2以上という大面積のTi-PTLも「Currento」という製品名で量産出荷しているという(図4)。

(a)Ti-PTLの100倍拡大模型
(b)ベカルトの大型Ti-PTL製品
 
図4 大面積化するTi-PTL
ベカルトのTi-PTLを100倍に拡大した模型(a)と、面積が5000cm2以上の大型Ti-PTL製品(写真:日経クロステック)
Posted by Morning lark
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