電池や水素で次世代技術 トヨタが示したクルマの未来
航続距離1,000kmを可能にする電池と電費改善、燃費・寿命・コストの3拍子そろったFCシステム――。トヨタが近い将来に導入を目指す次世代技術を公開した。
トヨタは8日、報道陣に向けて、新体制方針のテーマである「電動化・知能化・多様化」の新技術を説明・体感するテクニカル・ワークショップを実施した。
最も注目を集めたのが、電動化の次世代技術。5月に立ち上がったBEV(電気自動車)ファクトリーの加藤武郎プレジデント、7月に発足する水素ファクトリーの山形光正 次期プレジデントが、新組織で送り出す商品や事業の展望を語り、それを裏付ける20以上の次世代アイテムを惜しみなく公開した。
このイベントの仕掛人の中嶋裕樹副社長は「クルマの未来を変えていこう」という新体制のテーマを改めて打ち出し、Chief Technology Officerとしての意気込みをみせた。
「トヨタはこれまでハイブリッドの代名詞となったプリウスや燃料電池車のMIRAIなど難しいと思われたことを技術力で乗り越え、未来を切り拓いてきた。技術の力で、お客様を未来へいざない、クルマを社会とつなげることで、社会の未来もつくっていく」
トヨタイムズでは、今回のワークショップで紹介された多様な技術を複数回にわたって特集。第一弾は、BEVと水素を中心とする革新技術のダイジェストを紹介する。 BEVファクトリー発足後、はじめて公の場に立った加藤プレジデントは「BEVで未来を変える。クルマ・モノづくり・仕事の仕方を変え、トヨタの未来の発展につなげる」と宣言した。
この場で示したのが、同組織から2026年に最初の次世代BEV * を市場に投入すること、そして、350万台のBEV販売を見据える2030年には、170万台を次世代BEVが占めるという見通しだということ。
*電池やプラットフォーム、クルマのつくり方など、すべてをBEV最適で考えたBEV。電池を極限まで使い、電費改善も組み合わせて航続距離を1,000kmに。さらに心揺さぶる走りとデザインを兼ね備えたモデルでレクサスブランドから投入する
その次世代BEVへの搭載を見据える2つのリチウムイオン次世代電池が、今回初公開されたパフォーマンス版、普及版だ。
左から、現行の電池、2026年に搭載予定のパフォーマンス版、2026~27年の実用化にチャレンジする「普及版」。その隣が、2027~28年の実用化にチャレンジするハイパフォーマンス版と全固体電池。真ん中3つは画像処理を実施
パフォーマンス版は、電池の高エネルギー密度化と空力などの車両効率の向上で、航続距離は従来型比2倍となる1,000kmへ。それでいて、コストは20%減、急速充電も20分以内を目標にする。
普及版は、HEV(ハイブリッド車)のニッケル水素電池で採用実績のあるバイポーラ構造をBEV電池にも適用。
バイポーラは正極と負極を片面ずつにもつ集電体を積み重ねる構造。コンパクトながら大電流が流せるHEVよりも集電体1枚が大きく、これを正確に積み重ねる技術に難しさがある
航続距離は従来型の20%増、急速充電は同じく30分以内にとどまるが、部品点数を4分の1~5分の1程度に抑えられるため、コストは40%減を見込む。
そして、この2つの次世代電池の「いいとこどり」をしたのが、ハイパフォーマンス版。正極にハイニッケル系素材を採用し、バイポーラ構造と組み合わせる。
こうすることで、パフォーマンス版との比較で航続距離は10%増え、急速充電は20分以下を保ちつつ、コストは10%減らせる見込みだ。
「電池にも選択肢を」。フルラインナップメーカーのトヨタらしい、お客様のニーズに柔軟に対応できる開発を進める。
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