トヨタの燃料電池開発とエコシステム構築、水素ファクトリー山形プレジデントが展望語る…商用水電解装置も本格稼働へ

トヨタ自動車は、第3世代となる新型燃料電池(FC)システムを初披露した「H2 & FC EXPO 水素・燃料電池展」において2月19日、水素・燃料電池関連の取り組みに関するプレゼンテーションを実施。水素ファクトリーの山形光正プレジデントが「持続可能な水素社会実現に向けて」と題し、燃料電池製品開発とエコシステムについて語った。
商用ユースの課題にどう応えるか?
山形氏は、これまでの燃料電池(水素事業)の実績として、乗用車や『MIRAI(ミライ)』と『クラウン FCEV』が約2万8000台を販売。外販の燃料電池ユニットは約100社、2700台を販売、小型トラックでは161台、バスは150台を超える販売があったと発表。2023年7月の水素ファクトリー設立以来、水素の事業化や普及に邁進してきたが、商品を進化させ、競争力を上げていくのはもちろん、「つくる、はこぶ、つかう」の水素全体における供給から需要創出、エコシステムも同時に作り上げていく必要があると感じたという。
グリーンイノベーション(GI)基金事業としてCJPTが行ってきた実証では、58社のパートナーに使ってもらい、228万5423kmを走行管理(2月18日時点)。パートナーからは、「スムースな加速で疲れない」「振動が少なく荷崩れしない」という評価の一方で、「軽油と水素の価格差が苦しい」といった意見やメンテナンスへの不安、車両価格のダウンを望む声などが聞かれた。それにより、商用ユースの厳しい目を持った顧客の希望に応えられるような商品力・開発が必要だと認識したという。
そこで今回発表されたのが、開発中の第3世代の燃料電池システムだ。耐久性を2倍に引き上げ、ディーゼルエンジン同等の性能でメンテナンスフリーを実現。燃費性能を20%アップすると共に、セルの設計や製造プロセスなどを見直し大幅なコスト低減を行う。
ラインナップは3種類。乗用向け、汎用向けそして商用車向けのユニットを用意する。商用のニーズに応えるべく商品力を鍛え、従前から展開する乗用車にも発展させていきたい考えだ。

水素エコシステムの構築に向けて
続いてエコシステムの構築について。まず示されたのは各国における水素普及の現状だ。FCトラック販売にといては中国が約9割を占める(2023年販売実績)。山形氏は「このスピード感はどこからくるのかというと、中国は縦方向に2ライン、横方向に2ラインの主要都市を感染物流道路を水素ハイウェイにするという政府の構想があります。この構想に対し、OEM、物流事業者、水素製造共有事業社、そして物流を管理する高速道路事業者の4プレーヤーが政府主導のもと、幹線物流計画に対する貢献を宣言し、そこに地方政府も含めた様々な車両購入補助や水素科学の補助、場合によっては高速道路の無料化といったようなインセンティブが出ることで、一気に進んでいるというのが今の中国の状況です」と話す。

欧州でも有力なパートナーとの連携を強化していく。2023年のダイムラートラックに続き、2024年にはBMWとの提携の強化を発表している。 エコシステムの構築に関しては、自社のオランダ周辺における物流にFC大型トラックを使うことで、トヨタ自ら需要家になりシステム作りへの貢献をスタートした。 また、パリオリンピック2024の開催もあり、HysetCo*のMIRAIタクシーのフリートモデルは700台まで導入が進んだ。
* トヨタモーターヨーロッパが2019年に水素モビリティのさらなる推進を目指して設立した合弁会社。エアリキード、idex、STEPの3社と共同で設立された。
そして日本でも、政府主導で幹線物流の脱炭素化を目指し小型トラック大型トラックを計画的に配備していく取り組みが進んでいる。 「今回、(福島から福岡までの)重点地域については、1kgの水素に対して700円の補助をいただけるという非常に大きな政府のサポートが発表されています。 各国で先駆けて進められている事例に日本でもしっかり取り込むことで、ここからかなりスピードを上げて水素化が進んでいくと思っています」


一方で、水素ステーションの運営費用、設備が停止してしまうなどといった、運営上の様々な問題が課題としてある。 山形氏によれば、「こういったことにも、たくさんの会社の方が自ら手を挙げ貢献していただいている」という。トヨタ生産方式によってオペレーション改善のサポートを行っているほか、各企業が自社の技術を用いて水素ステーションの耐久性向上に協力している。さらに、国としても韓国の水素ステーションの運用コストの低さを参考に、国内法令の適正化を進めているそうだ*。
*水素ステーションの充填用ホースは、年数や充填回数により交換タイミングが定められている。韓国の交換寿命は日本の2~3倍だという。このような長寿命のホースを日本でも使えるようにすれば(安全性の確認・規定とホースの技術開発はセットで進められているが)、交換のために水素ステーションの運用を止める回数を減らすことができる。
このような動きをJHyM(ジェイハイム)、JH2Aといった水素団体が自ら牽引して、運営コストを下げるための取り組みをスタートした。政府も2030年に水素の価格を30円/Nm3(ノルマルリューベ)にするという目標を掲げている。
「こういったことが実現していきますと国際的にも競争力がある価格になってきますし、今ディーゼル車を使っている事業者の方にも非常に近い運営費用で水素を使っていただける世界が来る。まだ課題はたくさんありますが、この1年はたくさんの方が意志を持ってこのような動きを開始してくださったというのがとても大きかった。今後も皆さんと一緒にこれらを実現していきたいと思います」(山形氏)

商用水電解装置は5MW級と20MW級の2ラインナップ
その後のプレゼンテーションでは、2024年2月に発表された大規模水電解システム(装置)を共同開発に関して、水素ファクトリーの濱村芳彦チーフプロジェクトリーダーと千代田化工建設 フロンティアビジネス本部長 常務執行役員の松岡憲正氏が協業の進捗について語った。
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