微生物で「どこでも発電所」 実用化まであと一歩 山口大で世界最先端の研究進む
植物の根の近くに生息する微生物を使った発電の研究が国際的に広がっている。二酸化炭素(CO2)を排出しないため環境に優しく、植物が育つ場所ならどこでも「発電所」になり得ると注目を集めている。世界の研究の先頭を走るのが山口大大学院創成科学研究科のアジズル・モクスド准教授の研究室。実用化の一歩手前の段階まで来ている。
【メカニズム】微生物燃料電池 「植物微生物燃料電池」と呼ばれる発電システム。
植物の根の周囲にいる微生物が、餌である糖分を分解する際に生み出す電子を電源とする。植物が光合成で生み出したエネルギーは全ては利用されず、一部が根から糖分などとして出て土中などにたまる仕組みを活用している。 オランダで2000年代、水草などの水生植物から研究が始まった。アジズル准教授は土に生える植物での発電に他の研究者に先駆けて成功。現在は電極の設置が難しい大きな樹木でも発電可能な仕組みづくりを目指している。一連の研究は23年、英国の科学誌バイオソーステクノロジーリポートに掲載された。また、ことし6月、中国電力技術研究財団(広島市中区)から優秀研究賞で表彰された。 バングラデシュ出身のアジズル准教授は「世界では発展途上国などで16億人が電気なしで生活している。植物微生物燃料電池は導入コストも安価になると見込まれ、人々の生活を変える手段になる」と強調する。穀物や野菜の栽培と組み合わせれば、食物も電気も生産できる利点がある。 資源量に限りがあり二酸化炭素を排出する石油や石炭などの化石燃料による発電に代わる、持続可能な手法の一つとして関心が高まっている。アジズル准教授の研究室は、電極に竹炭を使うなど環境面の工夫を凝らしている。日照や降雨など気象条件による影響もあまりないという。 現段階は、電圧に比べて十分な電力が確保できないことが実用化に向けての壁となっている。アジズル准教授はこの電力不足の課題も「試行錯誤を重ねており、近く解決できるのではないかと考えている」とし、大気などの環境モニタリングなど電力使用量の少ない機器から導入が始まるとみている。
中国新聞社
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