データセンターのさらなるグリーン化へ、今後どう取り組むか
Googleは2017年以降、同社の電力消費量に相当するだけの再生可能エネルギーを購入することで、使用する電力のカーボンフットプリントを実質的にゼロにしている。Amazonも2030年に向けて再生可能エネルギーの比率を100%に引き上げるという目標を設定しており、Facebookは2021年時点ですでに世界の同社の事業で再生エネルギー比率100%を達成している。またMicrosoftは、2025年までに自社のデータセンターで再生可能エネルギー比率100%を達成することを目指している。 グリーンデータセンターへの投資はもはや単なるトレンドではなく、大手IT企業の責務のようになっている。今では、ほとんどの大手IT企業が自らに環境保護に向けた取り組みを課していると言っていい。 それには十分な理由がある。データセンターは世界中で日々発生している無数のトランザクションを処理する巨大な産業施設であり、全世界の数パーセントもの電力を消費していると推計されている。電力の多くは、サーバーと冷却システムで消費されている。やりとりされるデータは増える一方で、2025年には175ゼタバイトに達すると見込まれている。1ゼタバイトは1兆ギガバイトだ。データセンターの活動が縮小する兆候は、今のところまったく見えていない。 その意味では、大手IT企業が積極的に環境対策を進めると約束していることは当然のことのようにも思える。しかし、実際に約束を果たすまでには、まだ克服しなければならない課題が数多く残っているのが現状だ。ワシントン大学クリーンエネルギー研究所(CEI)のエネルギー貯蔵を専門とする研究者であるStuart Adler氏は、米ZDNetの取材に対して、「IT企業が魔法のような技術が登場するのを待っていれば、いずれはそうした技術が出てくるかもしれない。しかし、それらの企業が掲げている再生エネルギー比率100%を実現するためのスケジュールに間に合うタイミングで手に入るかは疑問だ」と述べている。「私にはその確信はない」 脱酸素化された未来のために各社が宣言している約束は、一見素晴らしいものに見えるが、その実態は細部まで見ていかないと分からない。例えば、多くの企業が掲げている「再生可能エネルギー比率100%」の約束は、実際には各企業が毎年消費したのと同じ量の再生可能エネルギーを購入することを意味している。しかしこれは、データセンターのすべての電力を、1日中太陽光発電や風力発電で得られた電力で賄うという意味ではない。再生可能エネルギーの比率100%を厳密に解釈すると、その目標を達成するのはずっと難しくなる。 データセンターは通常、その地域の電力網に接続されている。これは、再生可能エネルギーの電力が不足した場合、別の発電源で電力を生み出す必要があることを意味する。その多くは化石燃料を使用した発電源だ。こうした変動を補うために、企業は別の電力網に存在する再生可能エネルギーの発電所と契約し、再生可能エネルギーの全体的な購買量が総電力消費量と一致するようにしている。 つまり、IT企業の取り組みは再生可能エネルギーの購入(それがどんな再生エネルギーかに関わらず)を中心にしている場合が多いということだ。Googleは2017年だけでも、米国のロードアイランド州の年間電力消費量と同じ量の電力を太陽光発電所や風力発電所から購入しているし、Facebookは、2019年に米国の家庭160万世帯以上に供給できるほどの再生可能エネルギーについて契約している。
しかし、データセンターの電力を、1日のすべての時間帯にわたって化石燃料を使用しないエネルギー源で賄うためには(MicrosoftやGoogleのような企業はこれを最終目標として掲げている)、別の戦略が必要になる。それには、太陽が出ていない時や無風の時のために、地域の電力網に電力を貯蔵しておける仕組みを作る必要がある。各社は、これを実現するためにそれぞれのデータセンターのそばに自前の再生可能エネルギー発電源を構築するなどしている。例えば、Amazonは世界で86の再生可能エネルギープロジェクトを運営している。 しかしAdler氏が説明するように、これは方程式の片側にすぎない。「現時点では、再生可能エネルギーの生産の側が、再生可能エネルギーの貯蔵の側よりも進んでいる」と同氏は言う。「しかし生産したエネルギーを貯蔵し、必要な時に必要とする人に再配分するための方法を見つけなければ、効果は半減してしまう」 電気を貯蔵する方法は色々ある。もっとも確立された手段はリチウムイオン電池を利用することだ。リチウムイオン電池を使えば、太陽光発電や風力発電で生産された余剰電力を貯蔵しておき、需要が供給を上回ったときにはその電力を電力網に戻すことが可能になる。また科学者は、燃料電池などの高度なシステムに取り組んでいる。燃料電池を使用すれば、膨大な量の電力を(例えば水素などの形で)長期間にわたって貯蔵することができる。 燃料電池の基盤技術は、実際の環境に機器を導入できる水準まで進んでいる。例えばMicrosoftは最近、「Azure」データセンターの1つで、ディーゼル発電機の代わりに燃料電池を使用する試験的なプロジェクトを進めていることを明らかにした。同社はさらに大きなビジョンも示している。燃料電池などを備えたデータセンターを地域の電力網に接続し、需要が高い時期には燃料電池で電力を生成して供給するというものだ。 このように、障害になっているのは技術水準の問題だけではない。「現時点で、データセンターに必要とされる5年間運用可能で水素を使用した燃料電池が存在するかと聞かれれば、答えはイエスだ」とAdler氏は言う。「しかし、それらを現実的なコストで大量生産できるかと聞かれれば、答えはノーで、その問題はまだ解決されていない」 同氏はさらに、「これは大きな問題の1つにすぎない。大規模なデータセンターに燃料電池を備え付けたいと思っても、今のところそうしたシステムを供給できる企業はない。単純に、その製品を作れる製造インフラの規模が十分ではない」と続けた。 Alder氏の説明によれば、エネルギー貯蔵技術の市場規模が小さすぎるのだという。現時点では、燃料電池を製造している企業は一部で、多くが規模が小さい消費者市場向けの製品を作っている。例えば日本では、電子機器メーカーの京セラが固体酸化物形燃料電池(SOFC)を製造しているが、現時点では主に住宅や店舗で活用されている。今あるそうした顧客向けの製品の製造インフラは、世界のデータセンター事業者が必要としている製品の製造に必要なインフラとは異なる。
エネルギー貯蔵システムを成熟させるには、需要が急速に伸びる必要があるが、(新興技術にはありがちなことだが)需要は伸び悩んでいるようだ。Clean Energy Instituteのエネルギーシステム研究者であるBaosen Zhang氏は、IT企業が約束を守るためには、この状況を変える必要があると話す。「私たちは開発不可能な技術の登場を待っているわけではない」とZhang氏は米ZDNetに対し述べている。「それらの企業が2040年、あるいは2050年までに目標を達成したい考えであれば、実現は可能だろう。これは単に、導入するためにどれだけ投資するかという問題だ」 燃料電池のような新技術に最初に多額の投資を行う企業になることにはリスクもある。それには、供給企業もまだほとんどなく、不確実性も大きいエコシステムに飛び込む必要がある。また、基本的にまだ存在していない製造プロセスに関して検討する必要がある場合もあるため、費用の見積もりも難しいだろう。 IT企業が気候変動に関する目標を達成する上で必要なエネルギー貯蔵技術の供給能力は、デジタルサービスの容赦ない拡大に見合うような商業規模にはなっていない。また、市場が十分に成熟するまでにどれだけ時間がかかるのかも不明だ。 「これはニワトリと卵の問題だ」とAdler氏は言う。「製品を買ってくれる顧客が必要だ。そして製品を作る工場が必要だ。どちらを先に進めるかが重要になる」 また同氏は、「将来、IT企業がいずれ目標を達成できるかと聞かれれば、私はイエスと答えるだろう。それは間違いないと思っている」と続けて述べた。「では、2030年までに達成できるのかと聞かれれば、それは分からない。その問題には答えが出ていない」 Adler氏は、GoogleやMicrosoftなどの大手IT企業が自ら設定した意欲的な目標を達成するには、もっとリスクを取ると同時に、ある程度再生可能エネルギーの生産から貯蔵に重心を移す必要があると述べている。ハイパースケールデータセンターの爆発的な増加に対応するためには、市場の成長を加速させる必要がある。そして、そのための唯一の方法は、潜在的なコストや不確実性が高くても、小規模な供給業者と契約していくことだ。 しかし、楽観的な見方をしても構わないと考える理由はある。データセンターには世界的なエネルギー動向に大きな影響を与えられるだけの潜在的な可能性があり、十分な資金を持ち、気候変動の問題に積極的に取り組むと表明している企業によって運営されている。 「適切な企業が十分な取り組みをすれば、実現は可能だ」とZhang氏は言う。「それに加え、データセンターは今後も増え続ける。おそらくデータセンターは、新しいエネルギー貯蔵技術を世の中に紹介し、大規模なグリーン施設を建設することは可能だと示すには格好の場の1つだと言えるだろう」 電力を大量に消費する産業用施設は一般の人たちから誤解されていることが多く、データセンターはIT業界のグリーン革命につながる流れを生み出す施設になるかもしれない。そのチャンスを生かせるかどうかは、大手IT企業にかかっている。 この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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