キリン千歳工場、ボイラーに水素活用、太陽光で水電解
高砂熱学がPEM型水電解、TMEICがIGBT整流器を納入
北海道千歳市にある「キリンビール北海道千歳工場」では、ビール製造工程で使用するボイラー用燃料の一部を、今年6月からグリーン水素へ転換する実証プロジェクトに取り組む。出力約2MWの太陽光設備で発電した電力を使い水の電気分解によって水素を製造する。

電気分解装置には、高砂熱学工業製のPEM(固体高分子)型、同装置に投入する直流電流を作り出す整流器にはTMEIC(ティーマイク)製のIGBT方式を採用する。製造した水素を活用するボイラーの設計は三浦工業が担当した。

事業スキームとしては、三菱商事と高砂熱学が出資するMTグリーンエネルギー(東京都千代田区)が、水素製造設備の運転・維持管理を担い、水素を製造してビール工場に供給する。また、三菱商事クリーンエナジーが出資するMCKBエネルギーサービス(東京都千代田区)が、三浦工業製水素ボイラーを活用して水素由来蒸気を製造して供給する。

キリンビール、三菱商事、MCKBエネルギーサービス、高砂熱学工業、三浦工業の5社がプロジェクト概要を2月7日に発表した。またTMEICが整流器の納入に関して4月24日に公表した。
ビール製造では、麦汁煮沸などの加温工程で大量の蒸気を使用する。従来は、ボイラーで化石燃料を燃やして蒸気を作っていたが、この一部を太陽光由来水素で置き換えることにより製造工程でのCO2排出を削減する。
太陽光設備は約2MW規模、水電解装置は最大年間157tの水素製造能力を持つ。実証期間における水素供給量は年間70〜80tを想定する。これにより、年間最大約23%の熱需要を水素に代替し、年間約464tのCO2排出量を削減できる見込み。実証期間は10年間の予定で、他工場への展開なども検討していく。
PEM型水電解装置は、すでに普及しているアルカリ水電解方式に比べて、小型化が容易で、太陽光によって変動する出力への応答性に優れるという特徴がある。TMEICが納入する水素製造用整流器は、高砂熱学製のPEM型水電解装置「Hydro Creator(ハイドロクリエイター)」の一部として組み込まれる。
整流器は、従来、サイリスタ素子を使う他励式が一般的で、大容量に適しているものの高調波が発生するなどの課題もあった。TMEICはIGBTというパワー半導体を使った自励式を国内外でいち早く開発し、製品化している。IGBT方式は、高調波レス・高力率・低直流リップルなどの特長があり、変動する再生可能エネルギー由来の電源に向いている。